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主にフランス語学習と読書について書いてます

【読書体験記】中1の夏のジュブナイルSFと革の感触

ジュブナイルSFとは少年少女のためのやさしいSF小説です。

今もやっているのだろうか。私が中高生の頃、
夏休みが近づくと「〇〇文庫夏の100冊」のようなセレクションが本屋に並んだ。蒸し暑い日本の夏は読書には適さないと思うのだけれど、なぜなんだろう。

 

こめかみにタラ~と流れる汗も拭わず物語に熱中する、そんなふうに読んだ本と身体感覚がセットで記憶にある人も多いのではないでしょうか。

 

中学1年生の夏休み、家族と共におばあちゃんの家で2週間ほど過ごした。その時、誰とどこに行って何をしたのかもう遠い記憶でよく覚えていない。なのにはっきりと覚えているのが投げ出した足の下の革張りのソファの感触。家族と住むうちにソファはなく、小学校まで間違えてソフィと呼んでいたくらい馴染みのない家具だったけど、新幹線で行く距離にあったおばあちゃんちには革張りの応接セットがあり、私はそこに置いてあった一冊の文庫本をふと手に取り寝そべってページをめくった。

 

ショートパンツから伸びたむき出しの足が革に直接触れるので滑りが悪く、気持ち悪い。おまけに手に取った文庫の表紙も気持ち悪い絵だった。手持ち無沙汰もあって、その本を読みだした私はいつしか物語の世界に没頭していった。

 

ある日、中学生の男の子が先生に頼まれて学校の倉庫で掃除をしていたところ、急にドアが閉まり閉じ込められる。なんとか抜け出し家に帰ったら、家族の誰も彼のことを知らない、という恐ろしい設定の話だった。

想像してみてほしい、今日、学校から帰ったらお母さんが、誰?という顔をするのだ。働いている人なら、仕事で疲れて家に帰ったら妻が夫が「どちら様ですか?」と聞くのだ。最初は冗談か怒っていると思うだろう。でもそれが真剣なのだとわかったら…。その視線はあなたがみたこともない冷たさを放っている。主人公と同年代だった私はリアルにその恐怖を追体験した。不思議なことはこれにとどまらず、学校や町中で奇妙なことがたくさん起こり始める。行き場のない主人公は再び家に行ってみる。そこでみたお母さんの顔が!

 

これがきっかけでSF好きに… なることはなく、その後は歴史小説や海外文学にのめり込む。次にSFにはまるのはそれから何十年も経ってからだった。

 

ただ、今でも足の下に張り付いた革の感触と本の表紙の挿絵を覚えている。


SFジュブナイル「緑魔の町」筒井康隆

緑魔の町 (角川文庫 緑 305-11)

緑魔の町 (角川文庫 緑 305-11)

 

 

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